2018年07月01日

Will -素晴らしき世界- 軽く紹介&感想(ネタバレなし)

日本語公式:Will -素晴らしき世界- | Playism
 複数の登場人物の運命を読み解き、望む結末になるよう導くノベルゲーム。公式見てもらった方が早いんだけど、ポイントはこんな感じ。

・登場人物の語る出来事の一部を入れ替え、結末を変える
 登場人物それぞれのエピソードが、手紙の形で神さま=プレイヤーに届く。それを読んで、例えば「右に曲がった。そして全力で走った。」という文章があったときに、「全力で走った。そして右に曲がった。」のように入れ替える。これによって登場人物の行動が変わり、交通事故を回避したり、運命の人に出会えるようになったり……と結末も変わる。従来のノベルゲームだと複数の選択肢から選んでその後を変えることが多いけど、この文章を作り替えるのがユニーク。

・「入れ替え」は複数登場人物の間でも起きる(というかそれがほとんど)
 登場人物はそれぞれ別の場所や時間に生きているので、例えばかたや暴漢に追い詰められて絶体絶命、かたや退屈な授業中なんて状況も。それでも一部の行動を移動・交換することで、前者で暴漢にカバンを「投げつけた」行動がなくなり、代わりに後者で前の席の子に消しゴムを「投げつけた」行動が追加されて、それぞれまた結末が変わる……という具合。え、そっからそうなる?と予想外の展開もあり、それが楽しい。

 そして登場人物が増えていくにつれて、それぞれの運命は複雑に連鎖していく。各エピソードの結末はS〜バッドエンドにランク付けされており、基本的にはSランクにすると次のエピソードが出てくるんだけど、中にはここでこの人に泣いてもらわないと遠い先で行き詰まる、なんてこともあり、一度取ったSランクをあえてバッドエンドに切り替えることも。こうして時にはさかのぼり、分岐をいじっていくのがまた楽し。

 楽しいといいながら、エピソードはわりとシリアス・ダークなものが多い。一部残虐な表現もあるので、テキストだけとはいえ受け付けない人はいるかも。(個人的には、そこら辺は苦手なんだけど、プレイが止まってしまうほどではなかった)
 それを措いても、登場人物の行動を入れ替えることでお話を変えていくのは楽しいし、神の視点で人々の運命を操り(というほど上から目線ではないんだけど)突破口を開いていく爽快感もあり。インディーズならではのクセもありつつ、ノベルゲー好きにおすすめ。


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 突然ですが、火浦功という作家さんがいまして。遅筆を持ち芸に昇華したSF・非日常系ギャグ作家、超絶テレ屋だからなかなか書かないけどシリアス書いても面白いんだぞ。
 その火浦功の作品って、ハチャメチャなんですわ。デビュー作から、体を失った人たちの頭を自分の体に移植して住まわせてあげるという人間アパートの話。宇宙船が飛んでたと思ったら、次のページに「ちゅどーん!」ってでかでか書いてあって、その次のページではもう墜落してたり。最近でも出だしから夫がカエルになっていたり。……この下手くそな要約じゃ何がどう面白いのか全く分からないので、興味あったら作品あたってみてください。電子書籍で結構復刊しているし。
 で、この持ち味って、テキストじゃないと成立しない。絵にしたらさっぱり面白くないし、下手したら絵にすらできない。――と、初期の短編集で解説を担当した小池一夫先生がズバリ指摘していた。(はず。すみません今手元に原本がない)

※もうちょい例を挙げると、落語でもこういうシュールなネタはいくつかあり。『あたま山』『そば清』あたりでぐぐってみてくだせい。先述の人間アパートの話も、そういえば元ネタは落語らしい。

 翻って『Will』。一部イベントに絵が入るものの、基本的にはテキストのみ。地味だなーインディーズで予算限られてるからかなーとか思ってはいけない。むしろ絵がないことで、テキストがその自由さで存分に暴れているように感じる。車が邪魔ならジャンプして飛び越えちゃう。遅刻しそうなら時計の針を巻き戻しちゃう。太陽が西から昇っても、銅像がバナナの皮で転んでもいいじゃない。切って貼って並べてつなげて、そんな文章つくっちゃえ。
 ……すいません盛りすぎたかも。ゲーム内の実例挙げるとネタバレになっちゃう都合上、雰囲気を伝えようと架空の例をでっち上げると、今度はそれがゲームの内容を適切に伝えているかという新たな問題が。閑話休題。
 上記の架空例は少し割り引くとしても、先に書いた「そっからそうなる?」という飛躍はゲーム内でわりとある印象。中には現実では起こりえないような展開もある。これまでの情報を元に理詰めで解いていくようなものを想像していると、その飛躍が理不尽・不条理と感じる人もいるかもしれない。でもそれよりは、「こういう文章にしたらホントにこうなっちゃった」で進んでいく、テキストの持つ自由さがいいなあと思ったのでした。

 ……ここまで書いて、ひょっとしてそれ『せがれいじり』にも通じるのでは、と。あれはハチャメチャな文章を作るとそれを逐一絵にしてしまうという、今思うと狂気の沙汰としか思えない怪作だったけど。あれは確かに、そんな文章つくっちゃえ、だった。
 気鋭のノベルゲーを考察していたらおバカゲーの金字塔につながってしまったという、これもまたテキストの力なのか――お後がよろしいようで。
posted by 築城 at 06:27| 感想